ノーベル賞2018年(化学賞編)

投稿日:2018年10月18日 投稿者:ジミー


本日は、先日のノーベル物理学賞に続き、ノーベル化学賞のご案内ですね。
昨年のクライオ電子顕微鏡の開発というテーマから大きく変わって今年は、
フランシス・アーノルド博士による”酵素の指向性進化法”と
ジョージ・スミス 博士 &グレゴリー・ウィンター 博士による“ペプチドと抗体のファージディスプレイ法
にノーベル化学賞が送られました。
https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/2018/summary/

<酵素の指向性進化法とは>
自然界で起きている進化を、人工的に模擬して急速に再現する画期的な手法のことです。
まるで漫画の秘密道具のようです!

アーノルド博士の開発した「酵素の指向性進化法」と呼ばれる手法を利用し、たんぱく質の一種である酵素の機能を目的に応じて高める手法となります。
初めて聞くと、そんなことができるのか不思議に感じますね。
酵素はDNAから作られますので、そのDNAをうまく改変してやれば新しい酵素ができたというお話です。

酵素の指向性進化法について、右の図を用いて説明します。

1.改変したい酵素を作れるDNAとバクテリアを準備します。
2.1のDNAをランダムにバクテリアに挿入し、改変された酵素をランダムに作成します。
3.作成された酵素が目的の化学反応できるかテストをします。目的の化学反応ができないものは捨てて、目的の反応ができたバクテリアを残します。
4.3で目的の化学反応ができたバクテリアのDNAを再度ランダムに改変し反応テストの条件を厳しくしながら繰り返すことで、より最適な化学反応をできる酵素を作成します。
このように狙い通りの酵素を人工的に作成することで、バイオ燃料や創薬の開発効率化に多大な貢献をしました。

アーノルド博士はTEDのスピーカーとしても登壇しています。
ご興味のある方は是非!

<ペプチドと抗体のファージディスプレイ法とは>
スミス博士は、大腸菌などに感染するウイルスの仲間「ファージ」に遺伝子を組み込んで異なるたんぱく質を作る“ファージディスプレー”という手法を開発しました。その後、ウィンター博士は、その中から狙った特徴を持つたんぱく質だけを絞り込める手法を開発しました。ウィンター博士は、この手法で治療用の抗体を作り、リウマチなど自己免疫によって生じる病気や、がんの画期的な創薬に貢献しました。
こちらも下の図を用いて説明したいと思います。まずはスミス博士の”ファージディスプレイ法“です
1.まずファージのDNAを、ファージを作成するバクテリアに挿入します。
2.挿入されたDNAからファージはタンパク質のペプチドをつくりファージの表面に出します。
  これを、多種類のDNAについて行うと、様々なタンパク質のペプチドを表面に持ったファージが大量に作製できます。
3.多種類のペプチドから、目的のたんぱく質のペプチドと結合できる抗体を混ぜて目的のペプチドを釣り上げます

ウィンター博士は、この”ファージディスプレイ法“を抗体開発に活用しようと考えました。
ここで出てくるのがアーノルド博士の指向性進化法となります。
1.抗体のペプチドを作るDNAを改変させて多数のファージを作製します。
2.上記で作成された多数の抗体から強く結合できる抗体だけを選択します。
3.さらにランダムにDNAを改変させて、より強く結合できる抗体を選別します。
4.1~3を繰り返して世代を重ねてより強く優れた抗体を育てます。

このように本来ならば進化の過程で自然選択される現象を人工的に行う画期的な方法は今後も様々なバイオ材料や創薬の開発に活用され発展することが期待されます。

【ジミー】